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【AtCoderJobs】コンテストサイトで求人広告を掲載することについて

AtCoderJobsについて

AtCoderJobsについてのニュースリリースを出しました。

prtimes.jp

簡単に言ってしまえば、AtCoder(プログラミングコンテストWebサイト)のレーティングを添えて、エントリーだったり応募だったりが出来る、というサービスです。

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さて、これを見て、「AtCoderもPaizaやCodeIQのように就職サイトになったか」と思う人が多いと思います。ですが、AtCoderは就職・転職サイトではなく、あくまでもプログラミングコンテスト運営が本業です。

そこで、AtCoderJobsを始めるにあたっての動機や、開発思想などをここに書きたいと思います。

 

AtCoderが何を目指しているか

 AtCoderが会社として何を目指しているかというと、その答えは簡単で、「プログラミングの天下一武道会を開き続けたい」です。競技プログラミングは仕事や就職に役立つ、という話もありますし、実際にその関係でスポンサーがついていますが、企業として最も大事にしているのは、楽しいコンテストを開き続けることです。

 

それでもなぜAtCoderJobsを作るのか

簡単に言うと、理由は2つです。「作らないことでスポンサー企業に影響が出ているから」と、「参加者の要望が強いから」の2点です。

スポンサー企業からの要望について

近頃の就職・転職サイトは、成果報酬型のサイトが非常に増えております。どういう仕組みかというと、ある転職サイトから応募し、内定に繋がったとしたら、報酬としていくらかのお金が転職サイトに支払われる、というシステムです。

これが、現在のAtCoderのシステムと組み合わさると問題になります。AtCoderで企業を知ったユーザが、そういった成果報酬型のサイトから応募すると、AtCoderにも転職サイトにもお金を払わないといけなくなるわけです。

これだと、スポンサーは二重に支払いをすることになり、AtCoderでコンテストを開く意味が薄れてしまいます。スポンサーが減ると、当然開けるコンテストも減ってしまうわけです。

参加者の要望について

僕は、AtCoderはどちらかというとネトゲだと思っていたので、就職/転職に使えるというのはおまけだと思っていたのですが、どうやら想像以上に需要があるようです。

 最初は、「AtCoderの転職サイト化」を嫌って参加人数が減るのでは、と思っていたのですが、どうもそういうわけではないようです。

といいつつも、就職時期の学生以外が求めているものは、やはりプログラミングにおける天下一武道会だと思うので、そちらの側面を忘れてはいけないと考えています。

 

AtCoderJobs提供で起こってはいけないこと

 以上の動機から、AtCoderJobsで起こってはいけないことは、以下のようになります。

  • これまでのコンテスト開催企業が損をするようなサービスの提供
  • コンテスト開催から、ただの広告掲載に流れてしまうようなサービス展開
  • AtCoderの過度な就職・転職サイト化

順番に見ていきましょう。 

 

 これまでのコンテスト開催企業が損をするようなサービスの提供

 AtCoderJobsを通じて、多くの企業がAtCoderに求人広告を掲載できるようにすると、当然、コンテストをこれまで開催してくれた企業の注目度は相対的に下がります。

これは、コンテストの開催意義を減らしてしまうため、非常に良くないです。ですので、これまで開催してくださった企業や、今後コンテストを開催してくれる企業には、AtCoderJobs上で多くの特典を与え、損をしない仕組みを作る必要があります。

 

コンテスト開催から、ただの広告掲載に流れてしまうようなサービス展開

コンテスト開催よりも、ただ求人広告を掲載するほうがコスパが良い、という風になってしまうと、どの企業も求人広告の掲載ばかりをするようになってしまいます。こうなると、開催コンテスト数はやはり減少してしまいます。

このあたりも考えた上で、価格設定やシステム作りをしないといけません。

 

AtCoderの就職サイト化

AtCoderに参加しようとしたら、「このコンテストは、就職・転職目的の人以外は参加しないでください」なんて書いてあったら、即AtCoderをお気に入りから消しますよね? 僕は消します。

そもそも、就職・転職を意識していない人に、その情報が届いてしまうこと自体があまりよろしくないし、それを理由に出れないコンテストが増えてしまうのは良くない。そもそもそれを連想されてしまうこと自体も良くない。そこらへんを考えた時に、出来るだけ就職部分とコンテスト部分は分離する必要があります。

 

AtCoderJobsですること

これらを踏まえて、AtCoderJobsで大事にしたのは、以下の2点です。

  • コンテスト開催企業の無料利用
  • AtCoderJobsの外部サービス化
コンテスト開催企業の無料利用

最近1年間でAtCoderコンテストを開いた企業には、AtCoderの有料プランを無料で利用可能にしました。かなりランクの高いプランが割り当てられるように設定しており、求人広告が上位に表示されやすくなるため、コンテストの開催企業が損をすることはなくなるはずです。

これにはもう1個狙いがあります。求人広告とコンテストの抱き合わせ販売です。「コンテストでは予算が出ないけれども、求人広告なら既存の予算から落とせる」という企業がたまーに存在します。そんな会社に、「求人広告の効果を高めるオプションとして、コンテストをつける」という手が使えます。

究極的には、「コンテストを開いてくれた企業しか掲載しない」ってするのが、AtCoderの思想的にはベストなのだけれども、それだと開発費が全く回収できないので……><

 

AtCoderJobsの外部サービス化

AtCoderJobsは、AtCoderに登録した後、AtCoderJobsにも登録しないと、利用することができません。ですので、AtCoder参加者にとって、AtCoderJobsによって受ける影響は、以下の3つだけとなります。

  • 「AtCoderJobsリリースのお知らせ」の宣伝メールが1通来る
  • atcoder.jpのトップに「AtCoderで就職しよう!」的なバナーが出る
  • 就職目当ての参加者がビギナーコンテストに増える(おそらく)

たったこれだけであれば、「AtCoderは趣味でやってるんだ!就職色出すな!」って言ってる人でも、そんなに文句はないんじゃないでしょうか?

 

AtCoderJobsでしないこと、および危険性について

さて、AtCoderJobsの開発動機や理念を書きましたが、AtCoderJobsには、無視できない危険な要素がいくつかあります。

AtCoderJobsでしないこと・出来ないことを、以下に書きます。

  • 求人広告掲載企業の選別
  • 各人事担当者への対面での「アルゴリズム構築能力」についての説明

こちらも順番に説明していきます。

求人広告掲載企業の選別

AtCoderのコンテストを開く際は、大半の企業に対して、「どうしてAtCoderでコンテストを開くのか」や、「AtCoderユーザを本当に求めているのか」を確認してきました。そのため、これまでコンテストを開いた企業であれば、どの企業においても、AtCoderユーザとの親和性が高いと自信を持って言えます。

ですが、求人広告掲載となると話が違ってきます。掲載拒否をして良い条件が法律で決まってたり(ちょっとソースが怪しいので誤情報かもしれませんが、有料職業紹介事業の関係で多分そうだと思います)、そもそも件数が増えることが想定されるため、いちいち確認ができません。ですので、AtCoderユーザとの親和性が十分に高いかどうかは、AtCoder側では検証することができません。このあたりは、各自調査した上で、応募してもらえればと思います。

 

人事担当者への対面での「アルゴリズム構築能力」についての説明

多くの人事担当者さんは、プログラマに必要なスキル、というのをそんなに分かってません。プログラマに必要なスキルは会社によって異なりますが、その内容を把握できている人は少ないです。中途採用であれば、職歴などから、これまでの経験分野で大凡把握できるのですが、競技プログラミングとの相性については、把握出来ていないことが多いです。

そのため、各企業の人事さんが欲しい人材だと思っていても、実際はマッチしない可能性が否定できません。場合によっては、競技プログラミングで身に着けた能力が全く活きない職場である場合もあります。

いくつかの会社のように、「プログラマの実力が可視化できる!」と大言壮語してしまった方が、お仕事自体は増えると思います。実際、AtCoderJobsも、そう解釈した人が多いのではないかと思います。

AtCoderJobs側でも、採用担当者向けページに、AtCoderランクは、プログラマの能力の一部である、アルゴリズム構築能力を可視化したもの」であることを明記し、「AtCoderJobsへの広告掲載を検討される場合は、社内エンジニアと十分にご相談されることをお勧めします。」等の文章を掲載する予定です。それでも、全ての求人において、正しく確認が行われていることを保証することはできません。面接等で、「競技プログラミングをしていたのですけれども、社内で活用出来そうな部門はありますか?」等と聞いてみると良いかもしれません。(自分でどこに活用出来そうか等を考えられると尚良いです。そのあたりの自己分析&企業分析が出来れば、競技プログラマが就職に困るはずはないです。)

 

 

以上、AtCoderJobsの話でした。「競技プログラミングで就職したい」という要望は結構あったので、これがうまくいくといいなあ、と思ってます。最後には注意点を書きましたが、基本的には競技プログラマの幸せにつながるサービスを提供出来るつもりでいます。

今後とも、AtCoderをよろしくお願いします。