chokudaiのブログ

chokudai(高橋直大)のブログです

AtCoderの社長のままトヨタ自動車にアルゴリズムグループを作った話

2022年1月より、トヨタ自動車 デジタル変革推進室 に主査(担当部長)としてジョインし、6月より、アルゴリズムグループを新設しました。

 

(22/08/09 11:40追記) アルゴリズムグループについての情報は以下のページにあります!!! (追記おわり)

atcoder.jp

「なんで急にそんなことやってるの?」、「AtCoderの業務に集中しろよ!って思う人もちょこちょこいると思うので、そのあたりの考えを、AtCoder社長としての立場で書きたいと思います。

 

 

AtCoder・chokudaiを知らない人のための情報

ここは知ってる人は飛ばしてください。

AtCoder

2012年から提供されている、プログラミングコンテスト(競技プログラミング)のサービスです。年間70回程度のコンテストをオンラインで開催しており、世界中から40万人のユーザが登録・参加しています。

chokudai

AtCoderの社長です。プログラミングコンテストが好きです。Google Hash Code 2022世界一位、TopCoder Open 2012/2017世界二位、ICFPC世界一位5回、などが主なコンテスト実績です。

AtCoderアルゴリズムエンジニア

AtCoderでは、競技プログラミングをスポーツや趣味と捉えた上で場を提供していますが、マネタイズのポイントは、AtCoderのサービス上に多数存在する、アルゴリズムを扱えるエンジニアと企業のマッチングです。

AtCoderで培った能力がITエンジニアとして役に立つ!」と主張は出来ますが、もちろん、高度なアルゴリズム構築能力は全てのITエンジニアに必要な能力ではありません。様々な領域でAtCoderを評価して頂けていますが、最もAtCoderの能力が活かされるのは、巨大なデータを処理するサービスや、0.1%レベルの最適化が大きく影響するようなサービスです。

今回の案件で、トヨタ内にアルゴリズムグループが新設されましたが、もちろんトヨタは非常に力を活かしやすい会社の1つです。今後AtCoderユーザの有力な就職先の1つとして大きくなることを期待しています。

 

AtCoderの役立つポイント 研究開発編

今回の案件は研究開発に近いジャンルなので、そこに絞って話します。

AtCoderのようなアルゴリズムの問題が解けると、ざっくり「どうしたら良いか分からない問題」の一部を解決できるようになります。

……っていっても分かりにくいので、人工知能学会が出している、AIマップを引用して説明します。

AIマップ – 人工知能学会 (The Japanese Society for Artificial Intelligence)

引用元: 人工知能学会「AIマップβ 2.0 (2020年6月版)」

 

世の中のコンピュータで解ける問題は、大体この一枚に集約されます。このような問題を解くAI開発を考えた時に、色で大体分けると、

水色・赤→競技プログラミングの能力がめちゃめちゃ活きる

青→競技プログラミングが結構活きる。別分野も大切。

他→部分的には競プロが活きるが、データサイエンスなどの別分野の方が重要

って感じになります。

AtCoder的なアルゴリズムで解決するべき問題も多くあり、そうでない問題も多数存在する、というのがポイントです。

 

アルゴリズム開発と日本

現在の日本の多くの企業において、「AI開発!データサイエンス!」という流れが強くあり、データサイエンティストを多く採用している企業が多くあります。また、「DX」というキーワードもバズっており、こちらも取り入れている企業が多いです。

この2つについては様々な見方がありますが、僕の視点から見ると、企業が識別・集計・連結をさせた上で、扱えるデータや判断材料を増やすという取り組みに見えます。

AtCoderで扱う殆どのアルゴリズムは10年以上前に作られたものであり、決して新しい技術ではありません。ですが、様々なデータが収集され、さらにデータサイエンスの発達により、識別可能なものが増えた今、本来解くべき問題は急増しているはずです。ですが、アルゴリズムを扱うエンジニアは各企業に増えているわけではなく、これらの課題を適切に発掘・解決できていない会社が殆どである、というのが現状だと思っています。

データサイエンスやDXの部署があれど、コンピュータで解ける難題を包括的に解消できる組織を用意出来ている会社は少ないです。「AI」の名を関した組織でも、扱うのは機械学習のみ、というような企業がたくさんあります。

これらの企業に対し、アルゴリズムを扱えるユーザを送り込み、彼らが活躍できる適切な組織を作ってあげることで、多くの問題が解決できるようになると思います。

 

AtCoderをより楽しくするために

僕としては、やはりAtCoderは競技やゲームとして楽しんでもらいたいところがあります。ですが、それを全力で楽しむためには、罪悪感のない環境を作ってあげることが大切だと思っています。例えば、テレビゲームは楽しいですが、1日8時間もプレイをすると、「こんなことしてていいのかな……」ってなってきますし、純粋に楽しみづらくなってしまいます。

AtCoderは、その点をクリアできると思っています。AtCoderはスポーツ・ゲームとして取り組めるものですが、プレイすることで人生に役立つスポーツです。

巷では、NFT技術を利用してPlay to Earnだ!ゲームで儲けよう!みたいなのが流行ってるんですが、そんなんやってる時間があるならAtCoderをやれ!と言いたいです。

そういう意味において、AtCoderのユーザが役立つということは発信していきたいし、AtCoder自らが、彼らの役立つ環境を作り出せれば、と考えています。

 

AtCoderの今後

AtCoderは今後も楽しいコンテストを提供していきますが、それとは別に、AtCoderのユーザが活躍できる場も、同時に開拓していきます。その第一弾が、トヨタ自動車です。

AtCoderユーザの力が活きる企業はたくさんあります。僕自身が中心となり、AtCoderユーザを率いて、日本最大の企業の中で、アルゴリズムグループを活躍させることで、アルゴリズムの力、AtCoderユーザの力を証明できると考えています。

これが成功すれば、様々な企業において、アルゴリズムを含めた組織作り提案ができるようになると思います。現状は採用における母集団形成のみを担当しているAtCoderが、組織作りから人材集め、社内での運用まで扱えるようになれば、ビジネス的に大きな成長も出来ると思いますし、そうしたらまた新たなコンテストを始められるかもしれません。

 

トヨタchokudaiとしての発信もしたいのですが、そちらは社長じゃないのであんまり好き勝手出来ません。とても楽しくお仕事が出来ている、ということだけ発信しておきます。

色々出来ていて喋りたいこともたくさんあるので、そうした場が用意出来ればいいな、と考えています。

 

トヨタ自動車で、AtCoderの力を示してきます。続報を期待していてください。

 

 

ところで実は弊社は電通さんから出資受けてるんですけど、電通さんもアルゴリズムグループ作ったりしませんか???おっきい会社なので絶対やることたくさんあると思うんですよ。電通本体じゃなくて電通デジタルさんとかデータアーティストさんなのかもしれないけど。「トヨタさんでも電通さんでも」って言えたら営業的にも最強になると思うんですよ。どうですかね???電通さん???